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Solarcore®

2024.11.20

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Goldwin Play Earth Fund PORTFOLIO INTRODUCTION

Vol.3Solarcore®

火星探査機にも使用されるNASAの最先端素材「エアロゲル」を応用し、薄くて暖かい理想の素材を開発している「Solarcore®」。世界中のあらゆる産業に断熱革命を起こそうとしている彼らに、Goldwin Play Earth Fundも出資しています。いかにその素材は優れていて、どんな可能性を秘めているのか。Solarcore®のCEO兼共同創設者であるマイケル・マークスベリーさんに話を聞いてみました。

モコモコな冬服にサヨウナラ。NASAの技術で実現する新しいインサレーション。

ー まずは、Solarcore®を創業することになったきっかけから、教えてください。

マークスベリー:大学時代、スイスのアルプスでバックパッキングをしていたんです。季節は冬で、とにかく寒かったので、暖かく過ごすために服を何枚も重ね着していました。ただ、重ね着しすぎて見た目はもうミシュランマンみたいにモコモコで…。そのときに「もっと快適に暖かさを保つ方法があるのでは?」と思ったのがきっかけです。

ー たしかに、多くの人がその問題を抱えているように思います。

マークスベリー:そこからアメリカに戻り、同じ大学の友人であり現在の共同創設者兼COOであるリトヴィク・ヴェンナと一緒に、インサレーションについての調査を始めました。すると、おっしゃるように、多くの業界で「どうすれば厚みを抑えつつ、効果的に断熱できるか」という課題に直面していることを知ったんです。

ー そこから、独自の素材を開発することにいたったわけですね。

マークスベリー:そうです。幸運にも僕はAstronaut Scholarship Foundation(科学技術分野で将来性のある大学生を支援する財団)の支援を受け、NASAの技術である「エアロゲル」について学ぶ機会を得ました。エアロゲルは軽量で多孔性の物質で、99.8%が空気なのですが、火星探査機などにも使用されるほど、最高レベルの断熱材です。一方で非常に脆く、扱いが難しいという問題があったんです。そこでリトヴィクとともに、この素材を柔軟で、耐久性のある素材にするための研究をした結果、新素材である「Solarcore Foam(以下、Sc_Foam)」が誕生しました。

地球上で最も軽く、断熱性の高い固体とされる「エアロゲル」。半透明な外見から、「凍った煙」と呼ばれている。
地球上で最も軽く、断熱性の高い固体とされる「エアロゲル」。半透明な外見から、「凍った煙」と呼ばれている。

ー Sc_Foamは具体的に、どんな素材なのでしょうか?

マークスベリー:Sc_Foamは、 薄さと高いインサレーションを両立させた複合材料です。そして、僕とリトヴィクはまずアパレルブランド「OROS」を立ち上げ、この技術がアパレル業界に革命をもたらすことを証明したんです。

グースの厚みが30mmなのに対し、Sc_Foamの厚みはわずか2mm。保温性に加え動きやすさも兼ね備えているというから驚き。
グースの厚みが30mmなのに対し、Sc_Foamの厚みはわずか2mm。断熱性に加え動きやすさも兼ね備えているというから驚き。

アウトドア業界からエアバスまで。世界が注目する断熱革命。

ー 今春、Goldwin Play Earth Fundから出資を受けることが決まりましたね。

マークスベリー:とても光栄に感じています。この出資で、さらに僕らの研究は進歩するだろうと感じています。

ー 現在、Solarcore®に出資しているのは、どんな企業があるんでしょうか?

マークスベリー:ヨーロッパの航空宇宙企業「エアバス」のベンチャー部門や、アメリカのアウトドア用品店「REI」、 CIAの天然資源部門の元長官ハンク・クランプトンが設立した「Crumpton Ventures」などです。名誉ある投資家やパートナーに支えられています。そして、僕たちのアドバイザー兼取締役会のオブザーバーであるハップ・クロップ氏(ザ・ノース・フェイスの創業者)にもご協力いただいています。彼の豊富な知識と経験から学ぶことも本当に多いんです。

ー Goldwin Play Earth Fundの出資が決まるまでの経緯についてもお聞かせください。決定までの話し合いで、印象的だったことはありますか?

マークスベリー:Goldwin Play Earth Fundは、僕たちの技術に対して非常に丁寧な審査を行ってくれました。投資決定前には、アメリカにあるオフィスに実際に訪れてくれましたしね。地球の反対側から会いに来てくださるその姿勢には、こだわりや情熱を感じました。

オレゴン州ポートランドにあるSolarcore®のヘッドオフィス。プロトタイプのテストも、この場所を拠点に行われている。
オレゴン州ポートランドにあるSolarcore®のヘッドオフィス。プロトタイプのテストも、この場所を拠点に行われている。

ー ゴールドウインの事業や理念に共感できる内容はありますか?

マークスベリー:先日、富山にある研究施設を見学する機会をいただいたんです。そこでは、製品の品質を追求し、利用者の生活の質を向上させようとするゴールドウインの姿勢が感じられました。とても共感できましたし、僕たちと通ずる部分がとても多かったですね。

ー ゴールドウインとSolarcore®が協業することで、アウトドアウェアはどんな進化を遂げていくのでしょうか? また、それによって人々の生活が変わる可能性はありますか?

マークスベリー:僕たちは常に「より暖かく、より軽く」を目指しています。なので、この協業によって素材開発が進むことで、いつもの服がより身軽に、より暖かくなって、日常がいま以上に快適になっていくはずです。

保温性を確保するのに欠かせない空気を、ほぼ完全に閉じ込められるのがエアロゲルの特徴。薄さがわずか2mmであっても、一般的なダウンジャケットよりも優れた保温性を実現できる。
空気を、ほぼ完全に閉じ込められるのがエアロゲルの特徴。薄さがわずか2mmであっても、一般的なダウンジャケットよりも優れた断熱性を実現できる。

ー ありがとうございます。最後に、今後のSolarcore®のビジョンを教えてください。

マークスベリー:服だけでなく、この技術をいろんな分野で活用していきたいと考えているんです。住宅や電子機器、航空宇宙産業など、断熱材を使用するすべての分野で、僕たちの断熱技術が活かせる未来を目指しています。

共同創業者でCOOのVenna氏(左)との2ショット。
共同創業者でCOOのVenna氏(左)との2ショット。